ビジネスリュックの販売を手掛ける「エース」という会社をご存じだろうか?
近年業績を伸ばし続け、2019年度の売上高は340億円にも上る。
高い業績を誇る企業であるが、この快進撃の秘訣はECサイトによる販路拡大にある。
なんと、たった4人の社員で24のECサイトを運営し、莫大な売上げを上げているのだ。
店舗を構えず、接客スタッフも雇用せず、パソコン一台で世界中への商品販売を可能にするECサイト。
そのECサイトの種類・はじめ方について徹底解説をしたいと思う。
市場規模を拡大し続けるECサイトとは
EC(Electronic Commerce)とは日本語で「電子商取引」という意味を持ち、ネットショップやオークションサイトなど電子商取引を行うWebサイト全般を指す言葉である。
電子商取引(でんししょうとりひき)あるいはeコマース(略称:EC)とは、コンピュータネットワーク上での電子的な情報通信によって商品やサービスを売買したり分配したりすること。
引用:Wikipedia
ECサイトの需要は年々拡大しており、2019年、日本国内でもBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円、BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は19.4兆円となった。
では次に、ECサイトの種類についても解説したいと思う。
ECサイトの種類
ECサイトは、下記のように大きく分けて2種類、細かくは6種類に分類される。
ECサイトを作るには、まず最初に「モール型」「自社サイト型」のどちらで構築するかを決める必要がある。
この2種類の特徴についても簡単に触れておきたい。
モール型ECサイト
モール型ECサイトとは、インターネット上のショッピングモール内に出店料を支払って自分の店舗を持つ形態である。
国内で有名なモール型ECには、楽天やAmazonなどが挙げられる。
モール型ECを利用するメリットは下記の通り。
- モール自体の知名度が高いため集客力が優れている
- 初期費用を抑えられる
ECサイトは0から構築しようとすると、規模によっては一千万円を超える初期費用が掛かるケースも多々ある。
しかしモール型ECの場合は、数万円の出店料を支払うだけなので初期費用を大幅に抑えることが可能となるのだ。
またその逆に下記のようなデメリットも存在する。
- 自店舗のブランディング・差別化が難しい
- 商品が売れる度に販売手数料が発生する
販売手数料に関してはモールごとに細かく設定されているため一概にいくらとは答えられないが、気になる方はAmazon出品サービスの手数料、楽天出店プラン・手数料を参考にして頂きたい。
自社サイト型ECサイト
そして2つ目が自社サイト型である。
ホームページを作る要領でサーバー上に自社のECサイトを構築する形態で、最も一般的なECサイト作成方法である。
自社サイト型のメリットは下記の通り。
- 自由にカスタマイズをしてブランディングを構築できる
- (基本的に)販売手数料が発生しない
またデメリットは次の2点となる。
- 集客経路を別途作る必要がある
- 高額な初期費用が発生する
モール型のようにAmazonや楽天の既存ユーザーが流れてくることはないため、ブログやSNSを使って自ら集客を行う必要がある。
また、自社サイト型ECも正確には更に4つに分類できるため、こちらも合わせてご紹介したい。
自社CEサイト4つの構築パターン
自社サイト型のECサイトを構築するにも下記4つの方法が存在する。
各々の相場費用・特徴を合わせて解説したいと思う。
ASP型
ASP(Application Service Provider)とは、アプリケーションを提供するサービスを指す。
この名前の通り、アプリをインストールする要領で非常に簡単にECサイトを構築することができる。
簡単に構築できるものの、デザインや機能に関してはアプリケーション既存のものしか使用できないため、カスタマイズ性は低い。
代表的なサービスにカラーミーショップ、BASEなどが挙げられる。
コスパ | |
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カスタマイズ性 | |
構築スピ―ド | |
相場 | 10~100万円 |
オープンソース型
オープンソース型とは、無料で配布されているソースコードを利用して自身で構築するECサイトである。
ソースコードとは、言わば料理におけるレシピのようなものであり、そのレシピが無償で配布されていることに違和感を感じる方も多いだろう。
しかしソフトウェア開発においては下記のような概念が一般的に浸透している。
ソースコードは何の制約も受けずに誰でも共有できるべき
現に、現在ご覧頂いているこのホームページもオープンソースの1種を利用して構築されたものだ。
ASP型に比べカスタマイズ性は上がるものの、相場は高くなる。
コスパ | |
---|---|
カスタマイズ性 | |
構築スピ―ド | |
相場 | 100~500万円 |
パッケージ型
パッケージ型とは、システム販売会社が販売するサービスで、構築から運用サポートまで一貫したパッケージ商品となっている携帯のECサイトである。
代表的なパッケージ型ECには、EC-Orange・ecbeingなどが挙げられる。
公開後も様々なサポートが受けられる反面、制作費以外にも高額な月額費用などが発生する場合が多い。
コスパ | |
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カスタマイズ性 | |
構築スピ―ド | |
相場 | 300万円~ |
フルスクラッチ型
フルスクラッチ方は全くの0からオリジナルのECサイトを構築する方法である。
アパートやマンションではなく、更地に一軒家を建てるのと同じ構図である。
制作費の相場は大きく跳ね上がるものの、圧倒的なカスタマイズ性を兼ね備えており、どのような形にも対応することができる。
コスパ | |
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カスタマイズ性 | |
構築スピ―ド | |
相場 | 1000万円~ |
また、ECサイトの相場についてはECサイト制作の費用相場にて詳しく解説しているので、費用面が気になる方は合わせてご覧頂きたい。
ECサイトに求められる機能
また、ECサイトは予算主体で制作をすると必ずといって言いほど失敗する。
まずはあなたがECサイトに求める機能を取捨選択し、それに見合ったECサイト構築パターンを探すべきなのだ。
ECサイトに必要とされる機能は下記6つとなる。
- 商品管理機能
- 顧客管理機能
- 決済機能
- 翻訳機能
- 販促系機能
- 分析系機能
それぞれについて簡単に説明をするので、あなたに必要な機能はいくつなのか数えてみよう。
商品管理機能
商品管理機能は商品情報や在庫情報を効率的に管理するための機能である。
モール型やASP型のECサイトにはデフォルトで備わっていることが多いが、フルスクラッチ型の場合などは商品管理機能の有無で製作費も大きく変わってくる。
「そんなに顧客数も多くないから」といった理由で安易に機能なしで制作を進めると、後々に売上げが増加するにつれて管理が困難になる。
顧客管理機能
顧客管理機能とは、商品を購入する際にユーザーに会員登録を促し、ユーザー情報を管理する機能である。
顧客情報を一貫して管理することで、効果的なメールマガジン配信などが可能となる。
アパレルなどのリピート利用率の高い業種には必須の機能と言える。
決済機能
決済機能とは、その名の通り支払い方法に関する機能である。
キャリア決済・クレジットカード決済等、支払い方法の選択しが多い程ユーザビリティは間違いなく向上するが、製作費の負担も大きくなる。
どのような業種のECサイトにおいても、クレジットカード決済は必要不可欠な時代である。
翻訳機能
こちらはECサイトを多言語に対応させるための機能である。
昨今では海外向けの「越境ECサイト」の需要も高まっており、10言語までに対応したECサイトも珍しくない。
こちらも対応すべき言語の数だけ制作費も大きくなるので、必須の言語のみ選択しよう。
「もしかすると中国人の方も利用するかも・・・」といったレベルの場合は不要である。
販促系機能
販促系機能とは、販売を促すための様々なマーケティング機能でおり、代表的な販促機能には下記3つが挙げられる。
- クーポン・キャンペーン機能
- チャットボット機能
- 送料無料レコメンド
送料無料レコメンドとは、「あと○○円で送料が無料になります」といったメッセージを表示させる機能で客単価の向上に効果的な機能である。
この他にも販促機能は多岐に渡り、自社で独自の販促機能を構築しているECサイトも多い。
分析系機能
分析系機能も多岐に渡るが、例えば下記のようなデータも取得可能である。
- サイト内のページをどのように巡回しているか
- サイト内にどれだけの時間滞在したか
- PC・スマホ、各デバイス毎のアクセス割合
- 何という検索キーワードでサイトに辿り着いたのか
分析系機能に関してはよほど特殊なデータ計測が必要でない限りはGoogleの提供サービスを利用することで簡易的に実装可能である。
費用に関してもさほど負担にならないはずだ。
以上、6機能の説明となる。あなたに必要な機能は何個だっただろうか。
制作会社に見積もりを依頼する際、自身のECサイトに必要な機能を先に伝える事でより正確な見積もり作成が可能となり、制作作業も滞りなく進めることができる。
ECサイトの売上を向上させるには
また、ECサイトにおける本当の課題は公開後の売上アップ施策にある。
ではECサイトの売上はどのように伸ばすべきなのだろうか。まずはECサイトの売上計算式をご覧いただきたい。
売上=訪問者数×CV率×客単価
計算式の通り、3つの要素の内どれかが0であれば売上も0となる。その逆に、3要素をバランス良く成長させることができれば、売上を爆発的に向上させることが可能となる。
この3要素について最後に簡単に解説したいと思う。
①訪問者数
ECサイトへの訪問者を増やす方法は多岐に渡るが、下記の3点を抑えておけば問題ない。
- Web広告
- SEO
- SNS集客
Web広告はもちろん広告費が発生し、運用も外注する場合は運用費も発生する。上手く利用しなければ利益を出すことは難しいだろう。
SEO(検索エンジン最適化)とは、Google検索エンジンで自サイトを上位表示させるための施策である。上記3つの中で最も時間と労力を要する。
ECサイトと非常に相性が良い施策がSNS集客である。
SNS集客の取り組み方・考え方は下記記事で解説しているので合わせてご覧頂きたい。
②CV率
CV率(コンバージョン率)とは、サイトへの訪問者の内の何%が商品購入に至ったかを表す指標である。
例えば、訪問者100人の内3人が商品を購入した場合、CV率は3%となる。
CV率は、商品画像・商品説明・価格表示方法・購入ボタンのデザイン・サイト全体のデザイン等々、実に様々な要因で変動する。
CV率に関しては、専門家に相談しつつABテストを繰り返しながら、長期的な目線で改善をし続けるべきだ。
③客単価
客単価とは、顧客一人あたりの売上金額のことである。
客単価を引き上げるのは容易なことではない。下記のようなマーケティング手法を取り入れてECサイトを運用する必要がある。
- クロスセル
-
ある商品を購入検討しているユーザーに他の商品も購入してもらう手法。「あと○○円で送料無料」と表示させる送料無料レコメンドもその1つである。
- アップセル
-
商品を購入したユーザーに、より高額な商品を購入してもらう手法。通販でよくある「お試し版」を購入したユーザーに本商品の購入を促すのも代表的なアップセル手法である。
これらのマーケティング手法は専門家に相談しつつ実施するのをお勧めする。付け焼刃の知識で行っても往々にして逆効果に働いてしまう。
まとめ
以上、ECサイトについて解説させて頂いた。
制作から運用までを考えるとかなりのコストが必要になるので、効果的なEC戦略を実現するにはある程度の予算は必要になるだろう。
しかし先ほどご紹介したASP型サービスを利用することで、簡易的なECサイトを自身で構築するのも可能である。
一度試してECサイトの世界に触れてみるのも良い。